キッチンやお風呂場、洗面台など水回りの掃除において、シンクや蛇口の水垢汚れ除去にクエン酸が推奨されるケースは多いです。
しかし、その使用方法に誤りがあると、かえって汚れが悪化してしまうことがあります。
クエン酸を用いて水垢を落とそうとしたものの、白く変色してしまい、汚れが目立つようになってしまったという事例は珍しくありません。
この記事では、そんな水垢汚れが白くなってしまう原因と、正しい対処法について詳しく解説します。
水垢汚れができる原因
まず、水垢とは何かについて説明しましょう。
水垢汚れの原因は、水道水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が固まることです。
水が蒸発すると、これらミネラル分が残り、水垢が形成されます。
掃除の際に特に厄介なのは、場所によって水垢の種類が異なることです。
- キッチンでは、油汚れや洗剤カスと混ざる。
- お風呂では、シャンプーやリンス、皮脂汚れと結びつく。
- トイレでは、尿石や蛇口周りのカルシウム汚れが問題になる。
これらの場所で異なる汚れが混ざるため、簡単には汚れが落ちないことがあります。
一般的に水垢汚れはアルカリ性であるため、酸性の洗剤(例えばクエン酸)を使えば落ちると考えられがちです。
しかし、実は水垢汚れには複数の種類があり、一つの酸性洗剤では完全に除去できない場合もあります。
クエン酸で水垢汚れを取る方法
クエン酸で汚れを取る方法は以下の4つの手順に分けられます。
- クエン酸水を作り、スプレーして拭き取る
- クエン酸水につけ置きする
- クエン酸水パックにする
- クエン酸ジェルで浸透させる
クエン酸水を作り、スプレーして拭き取る
水200mlにクエン酸小さじ1杯(5g)を入れて混ぜるとクエン酸水が作れます。
便器の尿石や、水道の蛇口・鏡、ポットや食洗機などの家電、ドアノブに付いた手垢にも使えます。
軽度の水垢はクエン酸水をスプレーし、ブラシやスポンジ磨いたり、タオルで拭き取ればキレイになります。
長期間の保管はできませんが、空のスプレー容器に作り置きしておけば、気になるところにサッと使えるのでおすすめです。
クエン酸水につけ置きする
蛇口の先端や細かな物にクエン酸水を使うことで、手が届かない部分まで洗浄が可能です。
しかし、つけ置き時間は一日完全にする必要はありません。
目安は5分から10分で充分です。最長でも30分です。
しばしばインスタグラムなどで「1日放置した」という投稿を見かけますが、実はそれはほとんど意味がありません。
水垢は油汚れと異なり、汚れの内部に浸透しにくく、クエン酸を溶かした水に長時間放置しても表面の汚れにしか効果がありません。
それだけでなく、時間の無駄にもなります。
5分ごとにブラシで表面をこすった方が、洗浄効果が高まります。
また、長時間つけ置きすると素材を傷める可能性があるため、ご注意ください。
手早く水垢を取り除きたい場合は、クエン酸よりも強力な酸性洗剤の使用を検討しましょう。
強力な酸性洗剤には浸透効果を高める界面活性剤が含まれていたり、研削剤との併用で洗浄力が大きく異なります。
クエン酸水パックにする
お風呂の鏡などでクエン酸水が垂れてしまう場合や、つけ置きできないお風呂の蛇口などには、キッチンペーパーをクエン酸水で濡らして包みましょう。
クエン酸で湿らせたキッチンペーパーが乾燥しないように、上からラップでしっかりと覆います。
パックの時間は、つけ置きと同じくらいの5~10分を目安にします。ただし、最長でも30分以内にしましょう。
クエン酸ジェルで浸透させる
クエン酸水と片栗粉、そして食器用洗剤(中性のもの)を組み合わせて、これを加熱することにより、のり状のクエン酸ジェルが作れます。
このジェルは暖かい状態で使用することでその効果を高めます。
また、ジェル状であるため平面ではない場所にも垂れることなく塗布でき、ラップを使わずに掃除をすることが可能ですから、手間が省けてお勧めです。
クエン酸で掃除すると白くなる原因
クエン酸を使用して掃除を行うと、場合によっては処理した部分が白くなる現象が発生することがあります。
その主な原因は以下の通りです。
- クエン酸が同じ酸性の汚れと反応することで白化
- 長時間のつけ置きによる乾燥が影響して白くなる
- 重度の水垢がクエン酸と反応して白くなる
- 想定よりも深刻な汚れが存在するかも知れない
これらの原因を軽減するための対処方法を後述しています。
クエン酸が同じ酸性の汚れに反応した
キッチンでは、食器洗い時に飛散する油汚れや石鹸カス、お風呂ではシャンプーやリンスの脂肪酸や皮脂がクエン酸と反応して白く変色することがあります。
つけ置きし過ぎた(乾燥が原因)
キッチンペーパーでパックした際に長時間放置すると、クエン酸が乾燥して粉末状に戻り、白く現れることがあります。
クエン酸の粉末を多く使い過ぎた場合や、洗い流し不十分で乾燥した時も同様の事象が起こります。
重度の水垢がクエン酸に反応して白くなった
軽度の水垢はクエン酸だけでも落ちますが、長年放置した重度の水垢はクエン酸の成分が反応して、逆に白くなることがあります。
その場合は、クエン酸だけではまず取れません。
実はもっと汚れていた可能性がある
水垢は水気があると白く見えにくく、表面が乾燥すると白く見える特徴があります。
蛇口の裏側をクエン酸につけ置きする際など、裏側をパっと見てどの程度汚れているのか確認することが多いですが、大抵の場合はすでに濡れていて、水垢が目立ちにくい状態です。
逆に、わざわざ掃除前にタオルで拭いて完全に乾燥させて、どれくらい汚れているのかを見る人は少ないでしょう。
掃除後はどのくらいキレイになったのかをしっかり拭き取って確認すると思いますが、水気がない分、実際には掃除前よりは汚れが取れているのに、乾燥させたことで水垢が目立ってしまい、逆に白く見えると勘違いしてしまうこともあります。
クエン酸を使って白くなった場合の対処方法
クエン酸の使用で生じた白い斑点には様々な原因が考えられます。
それぞれの原因に応じた対策をご紹介します。
- クエン酸が同じ酸性の汚れに反応した際の対策
- つけ置きし過ぎた(乾燥が原因)際の対策
- 重度の水垢がクエン酸に反応して白くなった際の対策
- 実はもっと汚れていた可能性がある場合の対策
クエン酸が同じ酸性の汚れに反応した際の対策
同じ酸性の汚れに反応するということは、逆のアルカリ性の洗剤を使って油汚れや石鹸カス、皮脂などの酸性の汚れを落とすことが重要です。
その後で再度クエン酸を使用し、掃除を行います。
掃除する際の正しい順序は以下の通りです。
- 油汚れ、石鹸カス、皮脂などの酸性の汚れをアルカリ性の洗剤で落とす。
- 水垢以外の汚れをすべて取り除いた後、クエン酸で掃除する。
この順序が逆になると、汚れが反応して白くなることがあります。アルカリ性の洗剤としてよく使用されるのは重曹です。
重曹はpH8程度の弱アルカリ性であり、加熱してpH値を上げることで更に効果を高めることができます。
つけ置きし過ぎた(乾燥が原因)際の対策
乾燥によりクエン酸が残ってしまった場合は、アルカリ性の洗剤や重曹を使って中和する必要があります。
同様の酸性の洗剤や中性の洗剤(例えば食器用洗剤)では効果が期待できませんので注意が必要です。
重曹水やアルカリ性洗剤をスプレーした後、スポンジでこすり洗いして、水でしっかりとすすぎましょう。
重度の水垢がクエン酸に反応して白くなった際の対策
重度の水垢汚れはクエン酸だけでは落とせないため、水垢落とし用の強力な洗剤を使用することをお勧めします。
表面を傷つけたくない場合は、研磨剤が含まれていない水垢専用の強力な酸性洗剤が適しています。
それでも汚れが落ちない場合は、研磨剤入りの洗剤への切り替えを考えましょう。
一方で、安価なクリームクレンザー「ジフ」は弱アルカリ性であり、水垢汚れに対しては研磨剤の効果のみ期待できますが、汚れを溶解させる効果はありませんので推奨しません。
また、重曹も弱アルカリ性のため、汚れを溶解することはありませんが、研磨剤としての使用も一定程度は可能です。
ただし、重曹の粒子は柔らかいため、効果的なクリーニングには適していない場合が多いです。
さらなる対策として、3Mの耐水スポンジなどが挙げられますが、これは細かなキズを残す可能性があるため、最も適した方法を選ぶ際の最終手段となります。
実はもっと汚れていた可能性がある場合の対策
実際に少し汚れが取れていたと感じた場合には、再度試すことをおすすめします。
徐々に汚れが落ちることがありますので、焦らずに取り組んでみてください。
それでも汚れが落ちない時は、強力な酸性の洗剤の使用を検討してみてください。
対処方法通り、いろいろ試したけど水垢が取れない場合
様々な方法を試しても水垢が落ちない場合、以下のような原因が考えられます。
- カルシウム系の水垢である可能性があります
- 水垢の汚れが厚くなりすぎて、通常の洗剤では落ちにくくなっている可能性があります
カルシウム系の水垢の可能性がある
一般的に「水垢」というと一括りにされがちですが、実は「マグネシウム系の水垢」と「カルシウム系の水垢」の2種類が存在します。
マグネシウム系の水垢は、シャンプーや食べ物の残りカス、油分などと水中のマグネシウムとが結合して生じる汚れです。
一方、カルシウム系の水垢は、水中のカルシウムが二酸化炭素と化合して形成されます。
これらの違いから、洗剤の選択にも影響が出ます。
例を挙げると、マグネシウム系の水垢に効果的な「有機酸」を含む洗剤は、カルシウム系の水垢にはあまり効果がありません。
カルシウム系の水垢には、「無機酸」を含む洗剤の使用が推奨されています。
洗剤のパッケージには、有機酸含有かどうかが記載してあるため、購入時にはその情報を確認すると良いでしょう。
水垢汚れが厚くなり過ぎて洗剤では取れない
研磨剤入りの強力な酸性洗剤でも落ちなかった、カルシウム汚れでもなかったときの対処法です。
どうしても汚れが落ちない場合は、削ることを検討しましょう。
耐水ペーパーも選択肢の一つですが、力が入り過ぎてキズがつきやすくなる恐れがあります。
そのため、クッションの役割を果たす耐水スポンジの使用がおすすめです。
これは水垢汚れに対する最終手段として有効で、他の方法で効果が見られなかった場合に試してみてください。
水垢の発生を防ぐには
水垢を防ぐ最も手頃な方法は、水分をこまめに拭き取ることです。
水切りワイパーやタオルを用いて、定期的に水分を拭き取ることで水垢の形成を抑えることができます。
しかし、使用したタオルは頻繁に交換し、衛生を保つ必要があります。
そうしないと、雑菌が増殖し、結果として菌が広がる恐れがあります。
労力を最小限に抑えたい場合は、撥水コーティング剤の利用が推奨されます。
例えば、キッチンのシンクにコーティング剤を施すことで、水が表面で弾かれ、水滴が残りにくくなります。
これにより、水垢が付着しにくくなるわけです。
市場には、シンク専用、お風呂専用、トイレ専用といった様々な用途別コーティング剤が販売されていますので、お使いの場所に最適な商品を選んで使用してみてください。
まとめ:クエン酸で解決しない水垢もある
クエン酸を使うと、場合によっては汚れに反応して白くなったり、掃除前より汚れて見えてしまうことがあります。
クエン酸が万能な洗剤のように紹介されることも多いですが、全ての水垢を落とせるわけではありません。
そのため、場合によっては汚れが落ちないこともあります。
素人でも効果的に汚れを落とすには、専用の強力な洗剤を使用するのが一番の近道です。
手間をかけずに失敗したくない場合は、掃除の効率を考慮することも検討してみてください。